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名古屋高等裁判所 昭和24年(ネ)35号 判決

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人等の負担とする。

事実

控訴代理人は「原判決を取消す。被控訴組合が昭和二十三年八月四日控訴人等に対してなした組合員除名処分は本案判決確定に至るまでその効力を停止する。」との判決を求め被控訴人は控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の事実上の主張は控訴代理人において被控訴組合の第十六回中央委員会において控訴人両名の除名処分は正式の議題に上らず、従つて除名の決議は正式になされていない。控訴人両名は被控訴組合からの不当な除名の通告によりその勤先名古屋市交通局と被控訴人間に締結された労働協約に基ずき、昭和二十三年九月四日右名古屋市交通局より解雇され現在に至る迄定職を求めることができず、生活に困窮を来しているので、一日も早く本件除名の効力停止の仮処分を得て復職したいのである。と述べ被控訴人代表者において被控訴組合の組合員の除名は中央委員会の決議によらなければならないことは認めると述べた外原判決摘示事実と同一であるからここにこれを引用する。

(疏明省略)

理由

控訴証人等の申請する本件仮処分が仮の地位を定むるものであることは、その主張自体で明かである。そこで先ずその要件について考えて見るに仮の地位を定める仮処分をするのは継続する権利関係につき著しき損害を避け、若しくは急迫なる強暴を防ぐため又はその他の理由によつてこれを必要とするときに限られることは法律の明定するところである。

ところで控訴人等は被控訴組合の不当な除名処分によつて、被控訴組合と名古屋市交通局との間の労働協約に基ずき同市から解雇されたので被控訴組合に対し組合除名処分無効確認の本訴を提起するのであるが現在失業して生活に窮しているのでその本案の確定にいたるまで右除名処分の効力停止の仮処分を得て前記市交通局に復職したいというのである。

しかし控訴人等の被控訴組合を相手方とする仮処分が第三者たる前記名古屋市交通局を拘束しないことはいう迄もないことであつて、たとえ控訴人等が右のような仮処分の裁判を得たとしても名古屋市交通局は、その独自の見解によつて控訴人等の除名を正当と認めるならば控訴人等主張のような労働協約をたてにとつて解雇の取消に応じないであろう。したがつて、右のような仮処分の裁判があれば名古屋市交通局は控訴人等を復職させるであろうというのは、控訴人等の独りよがりの希望的観測に過ぎないものといわねばならない。たとえ右市交通局が控訴人等を復職させるようなことがあつたとしても、それは仮処分の効果としてではなく右市交通局自らの事情によるものである。控訴人等が右市交通局に復職するためにはどこまでも市交通局を相手取つて解雇の無効を主張し、必要とするときは市交通局を相手方として解雇の効力停止の仮処分を求むべきである。

すなわち本件仮処分は控訴人等の主張する解雇失業という著しき損害を避けるための必要な場合に該当せず、従つて仮処分の要件をみたさないから、控訴人等の申請はその余の点を判断するまでもなく失当なこと明かであつて、原審が控訴人等の申請を却下したのは結局において相当である。

よつて本件控訴を棄却すべきものと認め訴訟費用につき民事訴訟法第八十九条、第九十五条を適用して主文のとおり判決する。(昭和二四年七月二三日名古屋高等裁判所民事部)

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